平成22年4月1日改定

第1章 医療安全管理に関する基本

(目的)

本指針は、東京女子医科大学附属足立医療センター(以下「足立医療センター」という)において医療安全管理に必要な事項を定め、良質で安全な医療を提供するための医療安全体制を確立することを目的とする。

(医療安全管理の基本)

医療事故を防止し、安全医療構築のために足立医療センター職員は、以下の事項を共通の認識としなければならない。

(1)常に危機意識を持ち業務に当る。
(2)患者本位の医療に徹する。
(3)全ての医療行為において、確認等を徹底する。
(4)コミュニケーションとインフォームドコンセントに配慮する。
(5)記録は、正確かつ丁寧に経時的に記載する。
(6)情報の共有化をはかる。
(7)全体で医療事故防止への組織的、系統的な管理体制を構築する。
(8)自己の健康管理と職場のチームワークをはかる。
(9)医療事故防止のための教育・研修システムを整える。
(10)最高責任者はもとより、上席者は率先して医療事故防止に対する意識を高める。

(職員の責務)

職員は、業務の遂行に当たり、患者への医療・看護等の実施、医薬品・医療機器の取り扱い等、安全な医療を行うよう細心の注意を払うとともに、事故を未然に防ぐための知識、技術を習得しなければならない。

第2章 医療安全管理体制に関する基本方針

1.医療事故を防止するためには、ヒューマンファクター(個人の資質)に対する個人の努力もさることながら、医療機関が組織として取り組むことが重要である。

医療事故防止のため委員会を設置、医療安全管理者、リスクマネージャーの配置、院内報告制度並びに教育体制を確立する。

2.医療安全管理委員会

病院長を委員長とし、足立医療センター部長会メンバー、医療安全管理者を委員とする委員会で、月1回程度開催する。 医療安全管理委員会は随時、臨時医療安全管理委員会、リスクマネージャー委員会、医療安全対策室で検討された医療事故防止対策、改善案の合理性を審議し、決定事項を部長会、医局長・職場長会議、院内各委員会を通じ足立医療センター全体に周知させる。

3.臨時医療安全管理委員会

(1)医療安全管理担当副院長を委員長とする委員会で、足立医療センターで医療に関し重大な問題が発生したときに開催する。
(2)臨時医療安全管理委員会は、委員長が必要と認めた場合、並びに医療安全管理委員の求めに応じて随時開催する。
(3)構成メンバーは開催の都度委員長が指定する。
(4)会務は医療安全対策室が当る。

4.ジェネラルリスクマネージャー(GRM)

(1)ジェネラルリスクマネージャーは、医療安全管理担当副院長の医療安全対策室室長がその任に当たる。
(2)ジェネラルリスクマネージャーは、全体としての整合性を考慮し、事故防止活動が組織の目標に合致し円滑に行われるように管理する。

5.リスクマネージャー(RM)、リスクマネージャー委員会

(1)各部門の医療安全管理の推進に資するため、足立医療センター各部門に選任されたリスクマネージャーを配置する。
(2)リスクマネージャーは、医療安全管理委員会において決定した方針、医療事故防止対策、改善策等を現場に周知徹底させるとともに、相互に連携し情報交換や連絡調整を行う。
(3)リスクマネージャーはインシデント・アクシデントの発生原因、傾向の分析、改善策等を検討し提言する。
(4)リスクマネージャー委員会は月1回開催する。

6.医療安全対策室

(1)医療安全対策室は、足立医療センターにおける医療安全体制確保のための活動を行い、病院全体として組織の壁を越えて医療安全対策を推進する。
(2)医療安全対策室は室長(医療安全管理担当副院長)、副室長、医療安全管理者、事務で構成する。
(3)医療安全対策室は次の業務を行う。
①医療事故防止に関する情報収集、集計、分析、対策立案、フィードバック、評価。
②医療事故発生時における発生部門ならびに関連部署との連携、調整。
③関連委員会の開催。
④医療安全に関する組織横断的な改善策の立案、実施、評価。
⑤医療安全管理に関する職員教育・研修
⑥その他医療安全管理体制の推進に関する事項。

7.安全管理者の配置

医療安全管理のための体制確保ならびに安全管理の推進のため、以下の安全管理者ならびに安全管理責任者を置く。

(1)医療安全管理者
① 医療安全管理者は、医師・薬剤師または看護師のうちのいずれかの資格を有し、所定の医療安全管理研修を終了した者とする。
② 医療安全管理者は、医療安全管理委員会の構成員となり医療の安全管理に関する体性の構築に参画し、医療安全対策室の業務に関する企画立案及び評価、委員会等の各種活動の円滑な運営を支援する。また、医療安全に関する職員への教育、研修、情報の収集と分析、対策の立案、事故発生時の対応、再発防止策立案、発生予防および発生した事故の影響拡大の防止等に努める。そして、これらを通し、安全管理体制を組織内に根づかせ機能させることで、足立医療センターにおける安全文化の醸成を促進する。
③ 医療安全管理者は、医療安全対策の推進に関する業務に専ら従事し、医療安全部門の各組織ならびに各安全管理者と連携して業務を行う。
(2)医薬品安全管理者
① 医薬品安全管理責任者は、医薬品に関する十分な知識を有する医師、薬剤師、看護師のいずれかの資格を有する者とする。
② 医薬品安全管理者は、品質、在庫確認のほか医薬品の安全使用のための業務に関する手順書の作成、職員に対する教育、研修の実施、医薬品の業務手順書に基づく業務の実施、必要な情報の収集、安全使用を目的とした改善のための方策樹立等の業務を行う。
③ 医薬品安全管理者は、医薬品に係る安全管理のための体制を確保するため、医療安全管理委員会ならびに各安全管理者との連携により、実施体制を確保する。
(3)医療機器安全管理責任者及び実務責任者
① 医療機器安全管理責任者は、医療機器に関する十分な知識を有する医師、診療放射線技師、臨床検査技師または臨床工学技士のうちいずれかの資格を有する者とする。
② 実務責任者は、臨床工学技士、画像診断技師、検査技師の上席にあるものがそ  の任にあたる。
③ 医療機器安全管理責任者は、職員に対する医療機器の安全使用のための指導・教育・研修の実施、医療機器の保守点検に関する計画の策定や保守点検の適切な実施、医療機器の安全使用のために必要な情報の収集、その他の医療機器の安全使用を目的とした改善のための方策等の業務を行う。
④ 医療機器安全管理責任者は、医療機器に係る安全管理のための体制を確保するため、医療安全管理委員会ならびに各安全管理者との連携により、実施体制を確保する。
⑤ 医療機器安全管理実務責任者は、医療機器安全管理責任者を補佐し業務を円滑に推進する。

第3章 医療安全管理のための研修に関する基本方針

1.医療安全管理のための職員研修

(1)研修は、医療に係る安全管理のための基本的考え方及び具体的方策等について職種横断的に開催し、個々の職員の安全に対する意識、安全に業務を遂行するための技能やチームの一員としての意識の向上等をはかるとともに、足立医療センター全体の医療安全を向上させることを目的とする。
(2)研修は、年2回程度定期的に開催する他、必要に応じて開催する。
(3)新人医療職対象の研修は必須とし、中途採用者並びに帰局者についても適宜開催する。
(4)医療安全推進に必要な専門研修開催並びに外部機関研修への参加をはかる。
(5)研修を実施した場合、実施内容(開催又は受講日時、出席者、研修内容)を記録する。

2.研修への参加

足立医療センターの職員は、研修が実施される際には、極力、受講するよう努めなくてはならない。

第4章 事故報告等の医療に係る安全確保を目的とした改善のための方策に関する基本方針

1.安全の確保を目的とした報告体制

患者の医療安全確保、医療事故防止の観点から、医療を行う過程で発生した想定していなかった事象や、好ましくない事象の発見者または当事者は、所定の報告書を用いて報告する。

2.報告とその目的

この報告は、情報の収集・分析を行い医療事故を防止するための改善策を作成し、医療事故を未然に防止するシステムを構築するこ とを目的とする。

3.報告すべき事項

医療行為を行う過程で、医療者からの不適切行為があった場合、不適切ではなかったが予想されていない不都合な結果が生じた場合、医療行為に関する苦情、患者要因での不都合な事態、医療に関係する事案等について、患者への影響の有無にかかわらず、いずれか該当する状況に遭遇した場合に作成する。

4.報告の方法

報告は、原則として別に報告書式として定める書面をもって行い、事実のみを記載する。

5.報告者の保護

本指針に従って行われた報告は、報告者の個人的責任は一切問われず、院内での守秘義務は保持され、不利益な取り扱いを行われることは無い。

6.改善方策

医療安全管理委員会は、院内感染対策委員会並びに褥瘡対策委員会等と連携し、院内から報告された事例並びに医療の安全に関する各種情報に基づき、医療の安全に関する再発防止策や改善策を立案及び実施並びに職員への周知を図るとともに、改善策が有効に機能しているかを調査し、必要に応じて見直しを図る。

7.事故当事者への配慮

管理者等は、医療事故に係わった当事者に対して、患者・家族への対応等十分な配慮を行うとともに、精神的ケアや相談に応じる体制の整備並びに当事者の個人情報保護等に十分配慮しなければならない。

第5章 事故発生時の対応に関する基本方針

1.患者生命を最優先

医療を行う過程で、患者に予期せぬ重大な障害が発生した場合は、患者の生命を最優 先とし、上長や師長等に連絡し、診療の指示を仰ぎ、医療に万全の体制で臨む。また関連部門スタッフ等との連携により医療チームとして対応する。

2.記録

職員は、事故経過を整理・確認し、事実経過を医療記録に正確に記録する。なお、事故に関連した器材・器具等は原因確定の物品として保管する。

3.患者・家族への説明

事故発生後、診療に支障をきたさない限り可及的速やかに、事故の内容及び予後を、医療記録等に基づき事実経過を正確にわかり易く説明する。

4.事故の報告

診療に支障を来たさない限り可及的速やかに、直接または上長・師長などを通じて医療安全対策室(医療安全管理者)に連絡を入れ、事故報告書を提出する。
医療安全対策室(医療安全管理者)は、医療安全対策担当副院長(室長)並びに病院長等に迅速かつ正確に報告する。

第6章 医療従事者と患者との間の情報の共有に関する基本方針

1.情報の共有

懇切丁寧な説明を受けたいと望む患者と、十分な説明を行うことが医療提供の重要な 要素であるとの認識を持つ医療従事者が、協力し合う医療環境を築くことが必要であり、医療従事側からの十分な説明に基づいて、患者側が理解・納得・選択・同意が得られるよう、医療従事者は患者との間で情報を共有するよう努めなくてはならない。

2.指針の共有

本指針は、患者及びその家族から閲覧の申出があった場合には、速やかに応じるものとする。

第7章 患者からの相談への対応に関する基本方針

1.患者相談窓口の設置

(1)患者や家族等からの相談に応じられる体制を確保するための患者相談窓口として、患者相談室が担当する。
(2)相談等を行った患者や家族などに対しては、これを理由として不利益な取り扱いを行ってはならない。
(3)相談を受けた内容等、職務上知り得た内容を、正当な理由なく他の第三者に情報を提供してはならない。
(4)相談を受けた内容は記録するとともに関係部門に報告する。また、相談等で医療安全に係わるものについては、医療安全管理部門と連携して対応し、安全対策の見直し等に活用する。

第8章 その他医療安全推進のために必要な基本方針

1.医療事故事例の報告

医療事故の発生予防・再発防止策を講じるための、事故事例の報告に関する事項を定めた医療法施行規則第9条の23第1項第2号に示されている事案に該当する事例について、医療安全対策室から所定の機関に報告する。

2.医薬品・医療機器安全情報報告

薬事法第77条の4の2第2項に示されている医薬品または医療機器の使用による副作用、感染症または不具合の発生について、保健衛生上危害の発生または拡大を防止する観点から報告の必要があると判断した情報(症例)について、薬剤部及び医療安全対策室から所定の機関に報告する。

3.医療安全対策ネットワーク整備事業への協力

医療安全対策ネットワーク整備事業(個々の医療機関が収集・分析した情報や、当該情報を基に検討した対策などを収集・分析し、提供することにより、広く医療機関が医療安全対策に有用な情報を共有するとともに、国民に対して情報を提供することなどを通じて、医療安全対策の一層の推進を図ることを目的とする)に対し、医療安全対策室から事例の報告を行う。

4.指針の周知

医療安全管理委員会は、本指針を全職員に周知徹底する。

5.指針の改定

本指針は、医療安全管理委員会において、定期的な見直し並びに医療法の改正等必要に応じて改定を行う。