一般にいう排尿障害とは、正式には下部尿路症状(lower urinary tract symptoms; LUTS)のことであり、LUTSの中に蓄尿症状・排尿症状・排尿後症状があります。
これまでLUTSといえば、男性の前立腺肥大症に起因する症状がほとんどでしたが、近年女性のLUTSにも焦点があてられるようになってきました。これには1999年に腹圧性尿失禁に対する新しい手術術式であるTVT手術がわが国に導入されたことや、2006年に過活動膀胱の新規抗コリン薬が導入され、その後も治療薬の開発が進んでいることが大きく関わっています。
女性のLUTSについては、「女性下部尿路症状診療ガイドライン」1)が2013年11月に発刊されており、世界でも女性のLUSTに焦点を当てて書かれたガイドラインは珍しく、泌尿器科専門医師のみならず、プライマリケア医にとっても役に立つと思われます。
このページでは女性のLUTの代表的疾患である腹圧性尿失禁、過活動膀胱(切迫性尿失禁)、骨盤臓器脱、間質性膀胱炎の診断と治療について説明します。
尿もれとはどのような症状をいうのでしょうか?
尿もれという言葉から「尿がもれること」ということはわかると思います。
正確には、「尿もれ=尿失禁」は、自分が排尿しよう思う場所以外で、尿が出てしまうことをいいます。
尿もれは女性に多い症状です。
女性の方が男性より尿道が短く尿がもれやすい体の構造になっているため、年をとってきたり、太ってきたといった、様々な理由によって尿もれを起こしやすいのです。
日本排尿機能学会が行った排尿に関する疫学調査(2003)によれば、40歳以上の女性の43.9%が尿失禁を経験していました。
症状別にみる
腹圧性尿失禁
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腹圧性尿失禁とは、腹圧が高くなった(お腹に力が入った)時に尿がもれてしまう状態をいいます。
- おなかに力がかかる時、尿がもれる
- 咳やくしゃみ、跳んだり走ったり重いものを持ち上げたりした時に尿がもれる
重症になると歩行しただけでも尿がもれるようになります。
骨盤臓器脱
過活動膀胱
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過活動膀胱は急な抑えきれない尿意があって、自分の意思とは関係なく膀胱が勝手に収縮してしまう病気です。
尿意切迫感を有し、通常は頻尿および夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を伴うこともあれば、伴わないこともある状態と定義される自覚症状に基づく症候群です。
間質性膀胱炎
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間質性膀胱炎は、頻尿、尿意切迫感、尿意亢進、膀胱の痛みを主な症状とする病気です。
通常の急性膀胱炎でおきる終末時排尿痛と異なり、蓄尿時膀胱痛が特徴的で、尿がたまってくると膀胱や尿道に痛みや不快感・圧迫感が増し、排尿すると症状が軽くなることが多いです。
その他の頻尿
心因性頻尿 | 精神的な不安やストレスが原因となって起きる日中の頻尿で、就眠中はふつうに尿をためられます。リラックスしている時には、トイレが気にならないことが特徴です。 |
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夜間頻尿 | 夜間に排尿のために1回以上起きてしまう。 実臨床上は2回以上起きる症例が治療の対象となります。 |